Loom knittingとは?(棒針編みとの比較)

Loom knittingとは何なのかについての解説ページです。

棒針編みとの関係性についても触れています。

1. Loomって何?

 Loomとは、英語で機織り(はたおり)の機(はた)のことを指す語です。機械machineのことではありません。

 なお、日本語でいう「織り」だけではなく、例えばビーズを使ったものや、紐を織る簡素な作りのものも含めてLoomと呼ばれています。

 Loom Knittingは、そういった簡素な作りの道具を使って編み物をすることです。基本的にはペグが立っていさえすれば、編み物をすることができます。

 

2. リリアン/リリヤンとは違うの?

 基本的な技術はリリヤンと同じです。アメリカの技術を日本に輸入する際にリリヤンと名付けられたようです(wikipediaを参照しました)。

 ちなみに、日本でリリヤンと呼ばれているものは英語圏ではspool knittingなどと呼ばれています(名称が複数あるようです)。なお、spoolそのものは辞書的には「ぐるぐる巻きつけるもの」という意味合いがあるようです。

 リリヤンが小さくて細長い筒を作るものだとしたら、Loom knittingはその筒をさらに拡大して、布や服を作る道具と理解するとわかりやすいかと思います。

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3. どうして編み物として成立するの?

 実は、Loom knittingでやっていることは、棒針編みとほぼ同じなのです。棒針は、一本の棒に小さな輪を複数つけて編んでいく方法です。Loomは、その複数の小さな輪の数だけ棒を用意した棒針編み、と考えればよいのです。

リリヤンと棒針編みの比較

 そのため、かんたんなものであれば、Loom Knittingでも棒針と同じ編み図を使うことができます。

 また、ペグの太さや間隔が均等であれば、ペグの太さが5mmのLoomと棒針の直径5mmで同じサイズを編むことができます。

直径5mmのLoom(上)と、直径3mmの特注Loom(下)



 なおペグが向かい合わせになっているタイプのものを使用すると、棒針におけるdouble knittingやブリオッシュ編みといった複雑な編み方をすることもできます。

「ストレートタイプ」と呼ばれることが多い

4. どこで使われているの?

 主にアメリカで盛んなようです。Loom knittingについての編み方講座を開設しているアカウントもたくさんあります。

www.youtube.com

www.youtube.com

 

 アメリカでは編み物の一つとして広く認知されているらしく、Loomに特徴的なねじり編みですべてを編むスタイルを見て「あなたはLoom knitterなのね?」と指摘されることがある程には一般的な編み物の手段のようです。

 

 少なくとも英語圏が多いようですが、動画検索をしていると中国語やスペイン語の動画をよく見かけます。日本語で検索もしましたがyoutubeでは下記のチャンネルしか見つけられませんでした。

ちさと - YouTube

5. Loom knittingのメリット・デメリットは?

 棒針編みと同様の編み方ができるLoom knittingですが、ではどんな点が棒針編みと異なっているのでしょうか。

メリット

(1)持ち方が自由

 棒針編みには「正しい持ち方」などがあります。そのため、その手の形をとることができないような疾患や障害を持っている人には、必ずしも編みやすいとは言えません。関節を酷使することで患う疾患(関節炎など)もありますから、そうした疾患に悩む人には編み続けることが難しい編み方と言えるかもしれません。

糸と棒針の持ち方 棒針編み 基本のき 編み物 | 手づくりタウン|日本ヴォーグ社

 

 一方Loomでは、糸はLoomに固定されているため、どのような持ち方をしても問題ありません。フックも、握ってもよいしペン持ちでも大丈夫。糸をフックで外したりかけたりさえできればよいのです。

 そのため、アメリカでもLoom knittingは「関節に負担が少ない編み方」として紹介されています。

どんな持ち方をしてもOK

 以前棒針編みをしていた人が手首に問題を抱えてしまった場合に、Loom knittingに切り替えて編みものを続けている、というようなエピソードが多いようです。

 また、英語圏の記事の中には、「Loomであれば指でペグをたどりながら編むことができるため、視力が落ちている人でも編み物をすることができる」と紹介されています。

Adaptive Loom Knitting: Using a Stand with Clampable Loom

 

(2)糸の動きだけに集中できる

 手の動きが自由なことから、糸と糸の関係性に集中して編むことができます。私自身がLoom knittingをできるようになった最大の理由はこれです。

 棒針編みの場合、手の動きと糸の動きを同時に理解する必要があります。しかしながらLoomであれば、「この糸がこちらに動きさえすればよい」というところに集中できるため、編み物のハードルが一段と下がります。

 

(3)常に表編みができる→編み図のとおりに編めばよい

 棒針編みの場合は、左右持ち替えたときに、表編みで記載されている部分を裏編みする必要があります。そのため、左右どちらの編み方も習得しなければなりません。

 一方でLoom knittingは、常に表側から編むため、編み図の記号通りに編めばよく、また編み方も表側の一種類だけ覚えればよいのです。その点は混乱が少なく、非常に理解しやすい点と言えるでしょう。

 

デメリット

(1)棒針編みほど細やかな編み方ができない

 輪がLoomの幅や数に依存するため、目数の増減や、表側からのアプローチといった作業が苦手です。編み図によってはLoomでは再現できない場合も多々あります。

 

(2)そもそも道具が売っていない

 特に日本では、販売されているLoomの種類が非常に少ないです。また、出来もよいとは言い切れず、使える糸も限られています。アメリカほど豊かなLoom knitting文化が広がれる環境とは言えません。

 

6. いつからあるの?

 詳しいことは不明ですが、Spoolも含めるとすると、10世紀頃には存在していたようです(英語Wikipediaを参照しました)。また、「ローマの中空十二面体」と呼ばれる物体が、実はLoom knittingの要領で手袋を編む道具として使われていたのでは?という仮説も存在しているようです。

 こちらがその参考動画です。

www.youtube.com

 

7. まとめ

  • Loom Knittingとはかんたんな道具を使った編み物のこと。
  • リリヤンを巨大化したもの。
  • 英語圏で広く知られている。
  • 棒針編みとだいたい同じことができる。
  • 棒針よりも関節にやさしい
  • 歴史は意外と古い。